Spring REIT

REIT管理会社
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サステナビリティ

はじめに

頻繁に発生し、深刻さを増している極度の熱波や干ばつ、降水量の増加、さらに超大型台風の発生は、現在の気候変動危機の重要な例です。人間に起因する活動は温室効果ガスを大量に発生させており、中でも最も多く発生しているのが二酸化炭素です。これが地球温暖化という危機に大きく影響しており、さまざまな分野の組織による認識が切実に必要とされています。環境を保護し管理することは、全人類に共通する責任です。

「香港の気候行動計画2050」、中国の二重炭素目標、英国のネットゼロ目標が発表されたことに伴い、さまざまな環境プロトコルは、組織が重大な気候関連リスクを管理および認識するための指針を提供し、地球温暖化から生じる差し迫った影響を緩和することを目指しています。Spring Real Estate Investment Trust (以下「Spring REIT」)は、ステークホルダーと積極的に連携し、事業のバリューチェーン全体にわたって環境保護への取り組みを奨励し、気候耐性能力を構築し、気候リスクを管理するより前に緩和策への対応を強化することを目指しています。

Spring Asset Management Limited(Spring REITの管理会社、以下「Manager」、または「当社」)は、気候緩和と回復力に関する当社の全体的な管理アプローチ、実践、行動、および将来の計画に関して、投資家やステークホルダーとのコミュニケーションを強化するために、気候関連リスクに関する社内プロセスを以下のようにまとめています。

ガバナンス

  • 気候関連リスクと機会に関するManagerのガバナンスを開示し、取締役会による気候関連リスクと機会の監視、および関連する問題の評価と管理における経営陣の役割の両方を網羅します。

投資管理

  • Managerの投資戦略、投資分析、意思決定に関連するリスクを特定および管理するために対策と実践を示し、必要に応じて気候関連リスクを投資管理プロセスに組み入れます。

リスク管理

  • 構造化されたリスク管理手順を通じて関連する気候リスクを特定、評価、管理し、適切なツールと指標を適用して関連する気候関連リスクを監視するための適切な手順を講じます。

報告と見直し

Managerは引き続き当社のポリシー、リスク管理、投資戦略、原則を随時見直し、更新、改良し、ステークホルダーへのメッセージや最新情報として、公式ウェブサイトやその他の出版物を通じて、透明性のあるアクセスしやすい情報を開示します。

ガバナンス

ガバナンス構造

Managerは、2020年から当社の企業戦略目標と持続可能な運営を追求する目的で、強固なガバナンス構造を導入しています。これにより、ESG関連の方向性、戦略、計画を推進し、ESGや気候関連の問題を含むさまざまなリスクの側面を十分に監視および管理するための強固な基盤が築かれています。次の図は、Spring REITにおけるリスク管理の説明責任と責任のガバナンス構造を示しています。

Managerの取締役会は、長期的かつ持続可能な事業開発と運営を推進する上で、Spring REITの環境、社会、ガバナンス(「ESG」)戦略、リスク管理および実績を監督します。

リスク管理に関する取締役会の最終的な責任は、厳格かつ健全なリスク管理と内部統制システムが実装され、リスク管理および内部統制システムが有効であるかの見直しが適切に行われるようにすることです。取締役会はまた、特定された管理システムの重大な欠陥または弱点が、是正措置の実施によって対処されていることを保証します。取締役会は、Spring REITがさらされる可能性のある特定されたリスクと機会に基づいて、当社の戦略目標を達成し、当社の事業および外部環境の変化に対応するSpring REITの能力を強化するために講じるべき非財務リスクを含む重大なリスクの性質と範囲を評価し、助言します。取締役会の委員会である監査委員会および持続可能性委員会には、リスクおよび持続可能性を管理する責任が委任されており、明確に独立しながらも補完的な機能を担っています。

監査委員会は、Spring REITのリスク管理プロセス全般を見直し、年次リスク評価の見直しを通じて取締役会が認識する必要がある主要なリスク問題を特定し、取締役会に定期的に(少なくとも年次ベースで)報告します。経営陣が提案するリスク管理関連の強化案も監査委員会で検討し、規制要件の変更に対応できる能力を確保し、Spring REITの主要なリスク問題を完全にカバーします。

サステナビリティ委員会は、定期的な社内外のステークホルダーとの関わりおよび日常業務を通じて、ESGおよび気候関連リスクを特定し、評価する役割を担っています。サステナビリティ委員会は、調査結果をまとめ、重要なリスクの管理責任について、監査委員会を通して戦略的かつ財務的に取締役会に勧告します。

取締役会および従業員向けに、外部の専門家(該当する場合)が主催するESG関連のトレーニングセッション、会議、ウェビナーが開催されます。その目的は、絶えず発展し続けるESG市場において、専門能力を高め、ESGに対する認識を深めることです。気候関連リスクの管理に必要な職務をより適切に遂行するために、外部コンサルタントを雇用し、随時専門知識とアドバイスを求め、意思決定と規制要件の遵守をサポートする可能性もあります。

リスク管理

当社のリスク管理ポリシーとESGポリシーは、ESG関連の問題(気候関連リスクを含む)をビジネス上の意思決定プロセスにおいて考慮し、そのようなリスクに対処するために対応する緩和措置と改善戦略を考案するというSpring REITの取り組みを概説しています。Managerは、これらのポリシーに従って、企業リスクレジスターの下でさまざまなリスク領域(気候リスクと機会を含む)を評価する3つの防衛ラインモデルを備えた堅牢なエンタープライズリスク管理(ERM)システムを開発、承認、実装しました。Managerは、5 x 5のリスクマトリックスを採用して影響と可能性の2つの側面から各リスクを評価し、リスク評価をスコア化しました。発生の可能性が高く、Spring REITに重大な影響を与えるリスクはリスクと見なし、そのようなリスクを許容レベルにまで軽減するための緩和措置や行動計画を決定する必要があります。Managerは、年次リスク評価を通じて、財務的影響や運用上の混乱を引き起こす可能性のある気候関連の問題を常に監視し、関連する重大なリスクに対処しています。

Managerのリスク管理システムでは、トップダウン方式を採用しています。これは、リスク管理ポリシーとシステムの確立と維持において、取締役会、監査委員会、執行取締役、上級管理職による強力な監視によって実践されます。執行取締役は、リスク管理コーディネーターのサポートを受けて、関連する機能責任者またはその代理人(リスク所有者として)と協力してリスクの問題を特定し、必要に応じて前年度に承認済みのリスク評価演習を参照してリスクインベントリを更新し、特定された重大なリスクや危険度の高いリスクについてリスク所有者と話し合い、リスク軽減計画を策定して実行します。リスク軽減計画が執行取締役によって承認された後の適切なリスク管理プロセスと慣行を日常業務に組み込む責任はリスク所有者にあり、リスク所有者は、リスク軽減計画実施の進捗状況とこれらの計画のパフォーマンスに関する最新情報をリスク管理コーディネーターに提供します。

リスク所有者は、特定された主要なリスクをエスカレーションするとともに、少なくとも年に1回はリスク軽減計画および対策を策定または更新し、関連する情報をリスク管理コーディネーターに提出する必要があります。さまざまな部門または事業部からリスクをすべて集約した後、リスク管理コーディネーターはリスクレジスターを作成し、見直しと承認のためにエグゼクティブディレクターに報告します。その後、主要なリスクは、重要なESG関連リスク(気候関連リスクを含む)とともに、適宜監査委員会に提示されて定期的に見直しおよび評価が実施され、場合によってはさらに取締役会にエスカレーションされます。

特定された物理的リスクおよび移行リスクと、それらが当社の事業運営に及ぼす可能性のある影響に対する当社の対応は、以下のとおりです。

物理的リスク

頻繁に異常気象(巨大嵐、暴風雨、洪水など)が発生すると、建物の構造に深刻な損害(窓ガラスやガラス製ドアの破損や水漏れなど)をもたらし、それによって事業運営に支障をきたし、収益損失につながる重大なリスクであると考えられます。

一方、慢性的な気象現象は保険料を引き上げ、「高リスク」地域に分類される不動産保険の利用可能性を低下させます。たとえば熱波下では、室温を快適なレベルに保つために、施設内で消費されるエネルギーが増加し、降雨パターンが変化すると、洪水が発生する可能性があります。さらに、屋外での作業制限を含む極端な暑さや寒さによる生産性の低下も、収益の減少や資産管理サービスの品質維持に関する問題につながる可能性があります。

移行リスク

政策リスクに関しては、政府や機関によって気候変動、排出規制、関連報告に関する継続的かつ厳格な政策更新が行われているため、潜在的投資家が求める規制要件、義務、要求に準拠するために運用コストが増加する可能性があります。

不動産の開発と運営には、多くの場合、一定のエネルギー消費、ひいては炭素排出が伴います。市場リスクが発生すると、投資家は、環境への影響が軽微な対象資産に投資をシフトする可能性があります。気候変動と環境保護への意識が高まるにつれて、テナントもオフィスや小売スペースを探す際、グリーンビルディング機能を備えた環境基準の高いものを好んで選ぶようになる可能性があります。投資家の需要と顧客行動が変化することにより、従来の製品やサービスの需要が減少し、収益が減少する可能性があります。

当社の対応

当社では、物件のグリーンビルディング認証を取得するだけでなく、管理資産の建物の耐久性を強化するために、エネルギー効率の向上と入居者の健康増進に重点を置き、異常気象による影響を防止および緩和するための資産強化イニシアチブを継続的に実施しています。さらに、ビル管理者が緊急時対応計画を把握することで、重大な災害や事故に備え、対処し、損害や負傷を最小限に抑えて当社のお客様、従業員、物件を保護できるようにしています。

今後も引き続き、不動産ライフサイクル全体にわたる気候関連リスクと機会に対処することで、Spring REITのポートフォリオ全体の気候耐性を強化していまいります。気候変動との戦いにおけるSpring REITの運用効率と長期的な持続可能性を実証するために、投資管理と運用資産管理の両方において、毎年の関連リスクの評価・管理に十分なリソースを投入していきます。

Spring REITのリスク管理に関する詳細については、本ウェブサイトの「投資家向け情報」セクションからアクセスできるSpring REITの最新年次報告書のリスク管理と内部統制のセクションをご参照ください。

投資管理

Spring REITは、安定した分配金と持続可能な長期分配金の成長の可能性を投資家の皆様に提供し、長期的に資本を成長させることを目指しています。Managerの責任として、当社は持続可能な開発を促進するための取り組み強化を維持し、気候関連リスクと機会を含むESG関連の問題を当社の事業および投資戦略全般に積極的に取り入れています。

投資の戦略と目標には、投資ポートフォリオに対する投資選好と制限を特定し、相手方企業との対話を維持し、利益相反を公正に分析および管理するための基準が定められています。

Managerは、投資に関する提案を審査し、将来的にManagerおよびSpring REITの業務に悪影響を与える気候関連リスクがあるかどうかを検討する責任があります。当社は、新規買収および資産処分を開始する場合は、主要な投資審査および予備的デューデリジェンスプロセスを開始します。Managerは、新規の投資または資産処分を行う前に、社内スタッフまたは当社の監督下で外部コンサルタントに外注し、徹底した投資分析を行い、ケースバイケースで処理します。執行取締役は、主な市場および経済状況、およびESGや気候関連リスクなどその他の財務的または非財務的要因を考慮して、Spring REITの投資戦略を継続的に見直し、執行取締役が合理的に適切と考える範囲で調査結果と推奨事項を取締役会に報告します。

今後、Managerは、投資分析の初期段階でESG問題を考慮することに重点を置き、主要な取引に適用されるリスク評価を行い、財務および非財務のパフォーマンスの両面で対象資産の管理の質と深さを理解していきます。また、ローンをサステナビリティ・リンク・ローンに移行し、財務管理にESGの考慮事項を組み込むことも検討していきます。気候関連リスクと機会に関する影響を定量化および評価するために、Managerは、ESGデューデリジェンスのチェックリストを含む関連ツールと指標のパフォーマンスを強化し、より能力の高い投資管理システムを確立し、ESG問題に関する規制要件と投資義務の拡大に備えます。

Managerは毎年、さまざまな主要ステークホルダーグループと連携して重要性評価を実施し、ESG関連の問題を管理する際には彼らの見解を求めています。重要性評価の結果分析や同業他社の分析のベンチマークと合わせて、気候関連リスクはSpring REITに関連し、かつ重要事項であるとみなしています。

出典 :
香港の2050年気候アクションプラン、2021年10月。
中国の二重炭素目標:中国共産党中央委員会と国務院による新たな発展理念を完璧までに正確かつ包括的に実施し、カーボンピークおよびカーボンニュートラルに対する取り組みを成功裏に進めることに関する意見。2021年10月。
英国のネットゼロ目標:英国政府。ネットゼロ戦略:元の自然環境を取り戻す(Build Back Greener)。2021年10月。